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June 2010

オレたちバブル入行組

今度「鉄の骨」がドラマになるらしいので原作を買ってきて、そういえば昔読んだこの作品について書いてみることにしました。池井戸氏は元銀行マンということで、銀行ジャンルものをいくつも書いている作家さん。
本作は、バブル期に銀行にはいった半沢さんが主人公。とは言っても彼も既に大阪西支店の融資課課長。無理目な融資を上司の押しで無理無理やってみたら、融資先が焦げ付き、その責任は全て半沢に押し付けられる。どうやらスケープゴートにされた模様。
半沢は逆襲に燃え、様々な手を使って真実に辿り着き、自分を陥れた人物へのリベンジを謀る。という内容です。

銀行ものですので難しそうな内容を書いているのですが、割とそれが読みやすく、上手くかみ砕いて説明して貰えるような感じです。銀行の中でもいろんなタイプの人が出てきてそれも面白い。特徴的だと思ったのは、主人公のリベンジっぷりです。リベンジされる側がかわいそうになってくるくらいえげつないやり方で、なんていうかドス黒い(笑)銀行の上にある陰謀を暴いてるっていうと勧善懲悪みたいなんですが、主人公は、明らかに私憤で動いてるように思えます。そのへん、ある種の綺麗で定型的な主人公ではなくて、ちょっと面白いような。それが非常にインパクトの強い作品でした。

主人公が陰謀に切り込んでいく時、敵に容赦なく相手に斬りかかっていくんですね。悪意丸出しと言ってもいいような感じで。それが出来るのは、陥れられて、やり返している立場だからなのかな、自分が正しいと思っている立場だからガンガンいけるのかなー、と思ってみたり。

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横山秀夫『臨場』を読む

横山秀夫『臨場』を買ってきました。ドラマを第一シーズンから見てるんで、原作の方が後になります。原作は短編の連作集という感じなんですね。ドラマだと倉石さん主役に全て置き換えられていますが、原作だと倉石さんはちょこっとしか出てこないこともあり、まさに原作とドラマは別物という印象でした。

個人的に一番良いなと思ったのは『餞』。この選曲が泣かせにきてるだろ!と、うっかり小松崎さんに感情移入して泣きそうになりました(笑)

『黒星』原作の小坂さんのだめんずウォーカーぶりに衝撃を受けました。ドラマはみんな健全ですよねえ。

『真夜中の調書』犯罪者の息子を庇う父親に投げかけた、倉石さんの突き放すような台詞が、さらに佐倉さんによって咀嚼され、父親に伝わる。
加害者と被害者にはあった長い年月にわたるつながりが、この息子と父親にはない。それは父親がそれを投げ出してしまったからであると。その台詞が切ないですね。

『声』はつい最近ドラマで見たばかりですが、なるほど確かに評判通りドラマは随分マイルドになってるんですね。梨緒さんは決してそんなつもりはないのに、そういう方向に取る悪い男に行き会ってしまって、そういう方向に取られてしまうんだろうなあ。
しかし、原作の職場のオッサン上司二人は酷すぎるんじゃないかと…ドラマのは、ナチュラルにセクハラボディタッチをかます上司がすぐに「女の子の書いた物」とか言い出したり、実力を認めて引き抜きに来た他紙の編集者がやっぱり彼女狙いだったとかそういう話でしたよね。
でも逆にそれって最初からセクハラ系のキャラなのであって「まあ、こういう人いるよね」という印象だったのですよ。原作はオッサン二人とも梨緒さんが好きだと言いながらコレですからね。なんか余計、最低なんじゃないかと。

イチも設定違うんですね。
原作:既婚者で、どっぷり嵌った若い不倫相手が一度ウザくなったら別れさせるように自分から仕向ける
ドラマ:独身。準キャリアで水商売のおねえちゃんと一度は付き合ったけど別れる
ドラマのイチのほうが身綺麗に改変されているような(笑)ドラマは色々な意味で健全な世界観になっているんだと思いました。

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