黒川博行「螻蛄(けら)」を読む
図書カードをゲットしたので超・久しぶりにハードカバーに手を出してみました。
このシリーズ『暗礁』を読んだはずなんだけど、どうも記憶が曖昧です。まあ、場所が大阪か北朝鮮か沖縄かで、やってる内容は変わらないような気がするんですが(笑)今回は桑原さんが東京デビューという話だと知り、買ってみましたよ!どんな理由だ。
序盤、二宮がもうそろそろ38になるという設定を見て、時は流れたなあ…と思ったり、この人本当に今後の人生大丈夫なのかとうっかり心配したりでした。だって嶋田さんがゴルフレッスンのDVDみてるところにお邪魔して、
「ゴルフする?」
「下手なんです」
「じゃあこのレッスンDVD持っていきなよ」
「DVD本体がありません」
「じゃあ本体ごとあげるよ」
って、DVDソフトを本体ごとをお持ち帰り。もうすぐ38にもなろうという人が昔お世話になったヤクザの若頭に、いま使ってるDVD配線ひっこぬいてそのま貰って帰るのかよ!それはカタギの思考回路ではないよ!
常々、二宮さんは母ちゃんがお亡くなりになったら兵糧が尽きて死ぬんじゃ無かろうかと思っていたのですが、今回も従妹の悠紀ちゃんとか悠紀ちゃんの知人のゲイバーにお勤めの麻衣ちゃんとか、もう本当に色々な人にお世話になっています。そういえば今回は母親にはお金を借りていないような気が…と思ったら母親に借りたお金があるから旅先で昼キャバに行こうとか思いついててどうしようかと思いました。
『疫病神』の頃の二宮さんはともかく、今回の二宮さんは間違いなくマダオなんじゃないかと思わされましたヨ。
って、全然本編に関係ないですな。本編は宗教法人に絡んでヤクザの桑原さん(と桑原にひきずられた二宮)がお金儲けをもくろむ話です。しかし二宮・桑原ほかシリーズを通じて登場するキャスト以外はお金儲けをしようとする坊主とか坊主を抱き込んだ警察とか対立組織のチンピラとかそういう人たちしか登場しないという。
まずはここに行って殴られ、次にココでボロ雑巾になり、さらにはあそこで死にそうになり、というイベントが次々と起こり、…と、なんか連載モノっぽい話であるといいますか(実際に連載ものだったような)バタバタやってるうちに終わっちゃったかなという気はしなくもありません。
シリーズものとしては最初の『疫病神』やら『国境』の方が面白いと思いますので、このシリーズで最初にコレを読んじゃうよりも、最初の二作で行ってみたほうがいいんじゃないかなーと思いました次第です。
このシリーズは毎回いろんな利権が出てきて、それをとても詳しく書いてあるんですが、だから主人公がなにかを懐疑したり目覚めたりとかいうことはひとつもないんですね。とりあえずお金儲け、それですらない。
主人公の二宮は、ラクに稼げるかと思ってうっかり変な話に乗って、毎回変なトラブルに巻き込まれ、毎回引きずり廻され死にそうになり、ここまで来たらなんかお金貰わないとやってらんねー!という人です。なので実は、「金儲け」というポリシーもありません。そういうものがあるなら一本筋が通っているんだけど、べつにそういう筋もない。
二宮の今回の稼ぎは300万なんですが、毎回毎回積み重ねて今回もこんな目に遭って、それで300万なら最初からやらない方がいいと思うんですよ。というのは実は、二宮も毎回思ってるんだけど、何故か二宮は割に合わない行為を毎回繰り返す。結局、二宮はそういう懲りない人だなーと。
どんな大きなものに触れてもなにひとつ変わらない。その徹底した空気がこのシリーズの魅力だと思います。とりあえず毎回懲りずにオチも一緒で笑ってしまう。ただまあそのかわり、どれを読んでもべつに変わらないよね、という気がしなくもありません(爆)
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