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「新幹線大爆破」

CSでやってたので見ました。もうそろそろ新幹線ならなんでもいいらしい。とてもネタバレな感想です。

これは高倉健さん主演の映画で、「新幹線に爆弾を仕掛けた。時速80キロより下に落ちたら爆発する」という脅迫があり、新幹線が止まれなくなってしまった!という内容です。キャストは猛烈に豪華で、ちょっと北海道で工場の人が出てくるとそれが田中那衛だったり、猛烈に役立たずの警察なのに警察のエラい人が丹波哲郎だったりします。爆弾テロを仕掛けるのは倒産した下請工場の元社長(これが健さん)あと、集団就職にあぶれていろいろうまくいかないらしい若者、革命家崩れのダイナマイト持ち青年の三人。

新幹線を止めちゃいけない、80キロ以下に落としちゃいけない!という条件で数々の障害を乗り越え、ついには自力で爆弾を解除する国鉄サイドは非常にかっこいいですね。乗ってる乗客もパニックになっても耐えてるし、この状況で見事に新幹線の安全な運行を遂行して見せた当該ひかりのスタッフは凄いです。

一方でまったく地に足がついてないのが犯人グループで、彼らは「この事件が成功して金が手に入ったらどうする」と語り合い、ハーレーで世界中を走りたいとか、革命の成功した国へ行って人間への信頼を取り戻したいとか、とりあえずブラジルに行きたいとか、まったく現実味のない夢を語る。うわのそらで夢見がちなこのシーンは、とても印象的でした。

夢見がちなんだけど、とても冷たい。健さん演じる犯行グループの主犯・沖田に顕著なんですが、彼らは本当に、自分たちが爆弾を仕掛けたひかりの乗客なんか知ったことじゃないという感じです。でも、彼らは自分たちの仲間が死ぬと嘆き悲しむのですよ。こんなに夢見がちで現実感がない境地に至ってしまったから、まったく関係のないひかりの1500人を人質にするなどという倫理観が完全に吹っ飛んだ犯行をやっちゃうんだなーと。

新幹線のピンチを回避するために努力を重ねる国鉄サイド、仲間には優しいのに冷酷な犯行をやってしまう犯人グループに比して、とんでもなく間抜けなのが警察サイドです。犯人グループをいちいち取り逃がし、うかつな捜査で事件解決を遅らせ、最後までまともに機能していない警察は映画を便利に動かすための間抜けな駒になっているような。犯人がかっこいいのは、犯人が知的だからというよりも、犯人(というか、端的に言って健さん)をかっこよく見せるために警察を無能な存在として貶めている構造になっていると思います。

そこでひとつ気になるのが、沖田の別れた奥さんの扱いです。
彼女は、別れてもなお沖田を愛しており、警察に売るということができない。写真はないと突っぱね、国外逃亡を図る沖田を捕らえるため警察が彼女を空港に連れて行って顔を確かめてほしいと言っても無言を貫き沖田を逃がそうとする。

この展開が非常にひっかかりまして。そもそも沖田はもともと会社の社長だったんだし、親類だっているわけだし、写真はともかく似顔絵を描かせればいいでしょう、と言いたい。いや、この映画の警察はボンクラ揃いだからそうしないのか?
あともうひとつ、この奥さんは結局、別れただんなを逃がすためならひかりに乗ってる1500人が爆弾で吹っ飛ぼうがかまわない、というスタンスなんですかね。そこがよくわからないのです。
当該ひかりの爆弾は国鉄の努力によって解除されるんですが、沖田逮捕のために報道規制が敷かれているので、一般人の奥さんはひかりが助かったことを知らないはず。ということは、「ひかりは助かったんだから、だんなには逃げてほしい」という発想にはならないはず。
この映画の警察は「奥さんに写真がもらえないから沖田の顔がぜんぜんわからないよ」というレベルの無能ぶりなので、奥さんは警官同士の会話を聞いていてひかりが助かったことを知ってしまったとか?そうなると筋が通るような。

いや、この映画のクライマックスは「空港で沖田が家族と無言の再会を果たす」場面にあるのは明白だと思いますので、そこを演出するためには警察は沖田の写真を手に持ってて、空港のカウンターに現れた沖田を逮捕したりしちゃいかんと思うのですよ。
でも、そこまでの展開でひたすらボンクラな捜査で犯人を逃がし続けた挙句、爆弾解除の図面が保管されていた喫茶店が燃えちゃったよそんなバカな!みたいな御都合主義丸出しの筋立てを見せられると、最後の感動的な場面も非常に作為的に感じるといいますか…

なんかぼろくそ言ってますが、筋立てはともかく、新幹線まわりでは、ビュッフェがあったりコックさんがいたり新幹線の公衆電話に人が殺到したりなにもかもが懐かしい感じです。そういえば映画に登場するテレビがソニーでした。

あと、この映画には関係ないんですが、「レディ・ジョーカー」の映画で犯行グループのリーダーを演じたのが渡哲也だったのですね。映画のパンフレットには、最初氏には誘拐される会社社長役のオファーが来ていたが、反抗グループのリーダーをやりたいと渡哲也のほうから申し出があった、とかそういうことが書かれていまして。

そういえば「レディ・ジョーカー」もいろいろ行き詰った人たちが集まって企業を脅迫して大金を手にしようとする話でしたね。じゃあハーレー青年がヨウちゃんで革命家崩れが高さんで沖田社長が物井さんだね!と、勝手に妄想。

あと、これ現代ならどうなの?最新型のぞみ車両がノンストップで車内は携帯で実況中継状態だよなーと思ったんですが、考えてみれば現在のぞみは品川駅全停車なのでこの映画の設定成り立ちませんね。取引のしようがない。

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