「定刻発車」
そろそろ鉄道カテゴリってのを作った方がいいような気がしてきましたが、とりあえず文庫で読めそうな鉄道ものを探していてコレを見つけました。「定刻発車」。
日本の鉄道は1分遅れると定刻発車になりません。
海外の統計では「遅れ」にカウントするのは10分~15分から。
なにこの差。
というわけで、日本から鉄道の国際会議に行くと、「君のところでは列車が遅れると社員を死刑にするのかね?」とか言われちゃうんだそうな。
あと、電車に乗るときには、「ココで扉が開くからココで待っててね」というラインがありますよね。あそこにピタリと止まりますよね。
あれは実はグローバル基準で見るとおかしいらしいです。
海外の方に言わせると、定刻通りに列車が止まり、しかも停止線にピタリと止まるというのはcrazyなことであるらしい。
では、何故日本の鉄道はダイヤ通りに動き、停止線でピタリと止まるのか。
本書は、この当たり前のように行われていることの裏にどんな理由があるのか、そういうことを解き明かしてくれる本です。
結論としてはこうです。
日本の鉄道はその輸送量からみると大層貧弱である。
その貧弱な設備で多くの旅客をさばくためには、まず、たくさん本数を走らせなくてはいけない。そして、たくさん本数を走らせるためには定刻通りに運転しないと詰まってしまう。
それほど本数が走っていない路線でも、他の路線にうまいこと接続する使命を果たすためには定刻発車から遅れるわけにはいかない。
さらに、停止線でピタリと止まって、そこに並んでいる乗客が効率よく乗り降りしてくれないと、駅での停車時間が増えてしまう。停車時間が増えるとダイヤ通りに動かない。
と、まあ、このような理由があるそうで。
「決して豊かでない資源を技術と生真面目さでフォローしている」。そう、鉄道とは、まさに日本そのものではないでしょうか。
(停止線に正確に止めた電車に順番に並んで乗り込むというのは、まさにお客さんも鉄道会社もいっしょになっているということです。と、この本には書いてある)
あと、おもしろいのが、「何故日本人は時間に正確なのか」を、江戸時代以前に遡って考察する章です。
我々日本人は、参勤交代を執り行う時に既にして、○泊○日でどこそこから江戸へ、という旅程表をきわめて詳細に作っているわけですよ。江戸時代からツアー組んで計画的に団体旅行してるわけですよ。これはおもしろいなあ。
そんなわけで、この本は、定刻発車する鉄道からひもとく日本社会というかシステムが浮かび上がってくるような内容です。機会がありましたら是非。
追記。「定刻発車」でスジを引く職業について出てきますが、スジ屋さんと言えば「ミカドの肖像」が面白かったですよ。そんなつもりで読んだわけではまったくなかったのに鉄道ネタが登場(と言っても物凄い昔に読んだ)。
スジ屋さんとはとてつもない職人さんだ…!と感心した本です。
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