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August 2008

「道誉なり」―人を死なせて、なおも生き続けるということ

北方南北朝ワールドを旅して早一ヶ月半くらい?
感想でも書くべなと思って色々下書きしていますが一番早く感想文を書き終わったのがこれ。
てなわけで道誉なり〈上〉 〈下〉 (中公文庫)
道誉なり、と言いつつ佐々木道誉はあんまり主役っぽくありません。
てかこれ尊氏の話じゃね?言ってみると尊氏が直義を殺す話なんだけど、直義視点というほどのものはないので、ほんとうに尊氏の話のような気がします。道誉は随所で登場するんだけど、例えば「悪党の裔」で赤松円心が主人公だったようには物語の中心に存在しない。

ところで北方謙三が歴史小説を書くようになったのは、現代社会を舞台にしたハードボイルドでリアリティの壁につきあたり、物語にもうひとつ力強いダイナミズムを与えたい…という理由なんだそうですよ。(「破軍の星」の解説より)
「道誉なり」を読んで、現代では出来なくて歴史小説で出来るモノのひとつに、「やむを得ず他人を死に追いやる」というシチュエーションがあるなあと思い至りました。

いや、その前に(はるか昔に)北方版三国志を読んだからなんですけどね。そこで、曹操が荀彧を殺すくだりが出てくるわけですよ。まあ、どこにでも出てくる話ですけど。北方版の曹操は荀彧を死なせて、自分はそれでも生きていて、これからもずっと生きていくのだと思う。
(というような内容だったと思うんだけど…ちなみに吉川版曹操は「そうか、荀彧は死んだか」と、自分で死なせておいて言う)

三国志では曹操が荀彧を、「道誉なり」では尊氏が直義を死に追いやる。そこで尊氏は、自らが涙を流すのを待っているけど、結局涙が出てこない。
共に戦ってきた盟友なり部下なり肉親なりを死なせなければならず、そのことを受け止め、苦い思いと共に受け入れ、そして生きていかなければならない。

うーむ、現代社会ではコレはできませんな。会社のために上司が部下を死なせてそれを個人の胸に納めて飲み込んでしまっては、それはハードボイルドではなく、企業小説にしかなりません。しかもそれじゃカタルシスもなく、共感もできません。

じゃあもっと相応しい状況を生み出せるのか?
近しい人間を死なせてまで守らなくてはいけないもの、というのはあんまり思いつきません。現代では。冷戦が瓦解してしまったのでスパイ小説でもちょっと無理そうだ。絶対的に、人の死より重いものがあり、親しい人間を死なせてでも守らなくてはいけないものがあるというシチュエーションは、現代物より歴史小説(あるいは時代小説)のほうがはるかに作りやすい。

如何に生きるかは如何に死ぬかであり、また、何を捨ててでも、これから先も生きていかなくてはいけない。北方ワールドの歴史小説というのは、そういう世界を体現している男達の物語であるように思います。これは、うまくはまると非常にかっこいい。

さて、本編の感想。
前述した通りこれは尊氏の話であると思うのですが、…いやその、男に抱かれて媚びる白拍子の女を尊氏は嫌う。その女のために、女をまるごと嫌いになる。白拍子の女が嫌いだから、白拍子の女が産んだ息子の直冬も嫌いになる。直義はその直冬を養子にする。直冬がきらいな尊氏は、直義をたてたら直冬が後継になってしまうから、ほとんどそのために直義を滅ぼしてしまう。ちょっとそんなところがある。
なんていうか、それどうなのか。いや、いいんだけど。別にいいんだけど驚きましたよ。
全体の印象としては道誉のばさら大名ぶりというのはさほど印象に残りませんでした。もっとガシガシにアクの強いやつを想像してたもので。

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風と雲と虹と・完走しました

な、長かった。ようやく完走しました。感想も長いよ!
というか「時専の毎日放映大河(本放送未見分)を完走する」というのは結構ハードル高いだろうと思っていたのですが、不可能でないことが分かりました。今度またチャレンジしよう。でも、リピートも終わってもう放送しなさげなやつも多いんだよなあ。素直にDVDをレンタルすればいいんですけどね。

でもって、非常に面白かったです。こんな知らない時代見て訳わかんないんじゃね?という当初の不安はあっという間にかき消えて物語にのめりこんでしまいました。

最終的に小次郎はどこで踏みとどまればよかったのかなあと考えたんですが、どこでしょうねえ。結局、どこというのはあまりないような気がするんですよ。
決定打になったのは鹿島兄弟を庇ったとこですが、あれはもう、しょうがないと思うんですよ。
鹿島兄弟のやったことがなんであろうと、それが犯罪クラスだろうと、一門の戦いの時にあれだけ世話になっておいて、今更鹿島兄弟を切って役人に引き渡すことが出来るわけがない。もしあそこで鹿島兄弟を引き渡していれば、という仮定は成り立たないんじゃないかと思います。

じゃあどうすればよかったのか?
足立の一件の仲裁に行かなければ良かったのか。
そのあと興世王なんか館に入れなきゃよかったんじゃないか。
だって都にいた時はっきり(ナレーションで)言ってたじゃないですか。小次郎はこの男を好きになれなかったって。でも将門は彼を頼ってきたものを追い返すことはしない。

だけど結局、どこで止まることが出来るのかというのはあまり思いつきません。
公の土地から逃亡した農民(って言わないと思うんだけどゴメン)をかくまっているあたり(そして藤太は彼らをたたき出している)結局鹿島兄弟がなにかしなくても決定的な事件が他に起こったんじゃないかと思います。

ただ、どうしても原因を個人に求めたくなることもありまして、「そもそもこれ、純友の殿が鹿島兄弟に穀物倉襲撃を命じたりしなければいいんじゃ!」とか、「興世王なんか入れるなよアンタ嫌いだったじゃん!」とか、そういうことは思います(笑)

…で、小次郎将門は叛逆の道を突き進み、あっさり斃されてしまう。
あまりにも早かった。え、昨日まで、てか今の今まで、負けて死にそうなんて、そんな感じまったくしなかったのに。
でも、あまりにも早かったおかげで、悲劇の道をじわじわと…みたいな悲壮感はなかったですね。小次郎を戦場で斃したあの一陣の烈風のように、すべてはあっというまに終わってしまいました。

ところで、わたしがこのお話で一番好きなのは太郎貞盛なんですよ。太郎ちゃんは非常にいいキャラです。一見人当たりがよさそうなのに心の底が冷え切った男です。この見た目と中身の乖離が素晴らしい。
平気な顔して小次郎を傷つけ追いつめておいて、結果小次郎が心底追いつめられて爆発してしまったあと、いきなり詫びて仲直りするあたりなんかもう最高です。太郎ちゃん冷たいよね~としみじみ思っていたら村岡のおじさんがちゃんとそう突っ込んでくれたので嬉しくなりました。
そんでもって仲直りしたけどやっぱり流されて小次郎を裏切る。(「折れた矢」)でもって太郎は言う。「許せ、小次郎」と。
結局それなのかよ!あんた結局いつもそれじゃないか!と心の底から思いました。
許せ小次郎、で許してもらえると思ってるでしょー。

その太郎が最終盤いきなり悟り切っちゃって「小次郎はもっと後の時代に生まれれば良かった、いや、もっと大昔に生まれれば良かった」とか言い出すわけですが、なにがあったんだ太郎。

なにがあったのかわかりませんが、とにもかくにも、その太郎の意思が田原藤太を動かす。
小次郎にかつての自分を見て、小次郎の将来に暗いものを感じながらも彼を殺したくない。そんな藤太を後押ししたのが、太郎の言葉です。私も同じように小次郎が好きだ、と。
太郎はここに至って、小次郎を殺す道をほんとうに選ぶ。
さんざん逃げ回って、周囲に向かって「どうだ、小次郎は強いだろう」なんて呟いていた彼が、いったいなにを考えてあの境地にたどり着いたのか、なかなか興味深い話です。

太郎は心が冷え切った男だから、対照的に暖かくて熱くてまっすぐな小次郎を好きなのがとてもよくわかります。そして一方でその小次郎を傷つけずにいられないのもよくわかる。太郎自身もそのことが分かっているんですよね。

都になじめない小次郎、あっという間に出世する太郎…というような事象として顕れるよりももっと根源的なところで太郎と小次郎は真逆の場所に立っています。本当に面白いキャラだなあ。

おう、いきなり太郎ちゃんトークに。
キャラ別で下書きしたヤツがいっぱいあるんですが、順次感想文を載せていこうと思います。帰省しちゃうのであとになりますが。

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オリンピックの話でも

私は家人に付き合って中日ドラゴンズの試合を見ているくらいの人なんですが…
岩瀬投手(の扱いというか起用法とでも申しましょうか)が可哀想すぎて泣けてきます。

(一ヶ月ぶりに書いておいてコレだけかよ!)
(でもなんか本当にね)

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