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「花の生涯」(北大路版)を時専で見たよ

思い立って時代劇専門チャンネルで「花の生涯」を見ました。どこの制作?と思ったらテレビ東京で、お正月に毎年やっている長編時代劇の枠で作られたものらしい。6部構成のドラマを1時間枠に切って全13話、にしたのかな?主役の井伊直弼は北大路欣也。井伊直弼のブレーン長野主膳に三浦友和、直弼のために働く女密偵村山たかは島田陽子。
あとメインどころは、直弼の側室の里和、里和に懸想する元彦根藩藩士勝又十四郎さん、ってとこですかね。
一日一話がんばって見ましたが、なかなか面白かったです。濃いね!(笑)
途中から直弼はおいといてすっかり勝又さんチェック状態になっていました。最初女にフラれて、惚れた女を取った男(直弼)を恨んでってキャラで、おそらくはこの人は最後の桜田門外の変にも関わってくるんだろうなあと予想がついたので、最後どうするんだよ、と思ったんですね。ずっと直弼を恨んでいた男が最後暗殺して終わりじゃそれはお話としてどうなのかと。そして、おそらく勝又さんは物語上死ななきゃならん人であるのだろう、と。そんなわけで勝又さんが変わっていく部分、変わらなかった部分というのがいちばんおもしろかったです。直弼?いや、立派すぎるとなんか感情移入できないじゃないですか!主膳は勝又さんとは別の意味でへなちょこだと思う(失礼)

以下、箇条書き的な感想。めっさ長いので閉じてみる。

井伊直弼…
この人が14代将軍に慶喜を推さなかった理由というのは、結局のところ13代将軍家定タイプの主君が好きだからなんじゃない?気弱そうだけど人徳者で、信頼する臣下(この場合直弼)を全面的に信頼してくれるタイプ。
いや、劇中で慶喜の主君としての徳のなさを直弼が見抜いて将軍擁立に反対したって出てくるんだけどさ、その直弼は老中首座の堀田正睦を勅許が取れなかったことで、満座の前で「そんなことでどうする!」って怒鳴り飛ばしてるんだよね。(堀田様も楽観していた割には結果がついてこなかったので怒鳴りたい気持ちはわからんでもないですが)
結局直弼自身が自分の考え一つでガンガン推し進めるタイプの人間だから、家定のように「決定力はないけど『徳』が売り」という主君を求めるのではないかな、と思いました。

初期埋木舎編で長野主膳&村山たかと知り合った時、周囲は「長野主膳と村山たかはデキてますよー」って気づいてるのに一人だけ知らなかった鈍感なお方。その後長野主膳の女を知らず知らず奪ってしまったことに気づき、たかと永遠に別れることを誓い、たかの三味線を壊してしまう。ってところは、直弼の自己完結な性格をよく顕していると思います。最後己の美学に則って敢えて死を避けなかったあたりとかこの人とても自己完結的だと思うのですよ…

村山たか…
直弼と、直弼のブレーン長野主膳にとっての「運命の女」。その美貌と才覚で直弼を、主膳を助け、女密偵として情報を集め男ふたりを支える。
性格的には情熱の人です。てゆーか臆面もなく「直弼と主膳のどちらも愛している、選べない」とかそうゆうことを言い出すあたり…(笑)
直弼はそういう女を脇に置いて「もうそなたへの思いは断ち切った」って自己完結しちゃえるタイプなんですが、一方の長野主膳は未練タラタラでグダグダなんだよな。というわけで、トモカズ(=長野主膳)は非常にふがいない感じでした。
途中、結構容赦のないことをするので、これは非業の死フラグ?と思ったらそうでもなく最後は仏門に入ってしまいました。

里和…
非常に健全で真っ当な女性。里和自身は「たか様のような才覚もなくお役に立てない」って嘆くんですが、里和さんはその心映えの清らかさがいいんだと思いますよ?
心映えの清らかな人なのでドラマ的には面白くないのかもしれませんが、こういう人が控えているから安心できるんだよね、という女性ではないでしょうか。優しいよね。

勝又十四郎…
大河版「花の生涯」のクレジットを調べると、おそらくこの人、このドラマで思いっきり出番を嵩上げされてます。クレジットを見ると四番手なんですが、こちらのページを見るとすごい下にいるし。

埋木舎で直弼の身の回りの世話をしていた女・佐登の幼なじみ。佐登に惚れていたがあっさり振られ、しかも彼女は直弼の側室になってしまい、里和と名を変え「お部屋様」の身分に。女を取られた逆恨みで直弼に危害を加えようと画策し続ける…んだけど実際には弱っちろいへなちょこなチンピラ侍。でも意外としなやかに生きているので生活能力が高いような気がします。

直弼がストイックで理想を具現化したような生き方をしているので、逆恨みをエネルギーにしてなんかしでかしてやろうとする勝又十四郎の卑近さは、むしろこっちに感情移入できる感じ。
最後の最後で直弼に説教されて改心するのですが、その場面、最初は「なんだ説教かよ!」と斜めに構えて見ていたのですが、終わってみればいい説教でした。ビバ大老。
水戸藩の連中と混ざって直弼暗殺計画に関与し続けるも最後は直弼の説教に心打たれ直弼を助けようと敢然、桜田門外の直弼襲撃の渦中に飛び込む。腕を切り落とされた十四郎はそれでも直弼を探しその体に縋り付くが、残酷にも直弼は首を落とされていた…ってこんなの正月に流していいのかよ!

獄に繋がれ護送される吉田松陰を助けようとするあたりは変わった、男になった!と思ったんですけどね。あとでその行動もホンモノじゃないとたかに見抜かれてしまいました。変わったようで最後まで変わらなかった。美味しいキャラです。私としては、全く嘘ではなかろうよとフォローしてあげたいところです。個人的には一番の当たりキャラ。


長野主膳…
勝又さんが出張ったおかげで後半思いっきりはじき飛ばされた感が…(汗)
長野主膳は直弼のブレーンとしても働いていますが、直弼・主膳・たかという数奇な運命で結ばれた三人…って設定なんですよね。
けれど村山たかは十四郎に抱かれ、十四郎の生き方に自分を見る。十四郎には攘夷も倒幕も関係なく、ただ里和に気に入られたいがために、里和にどんな形でも振り向いてほしいがために、十四郎は敢えて里和の愛する直弼の敵になっただけなのだ。たかも同じだった。ただ直弼に見てもらいたいためだけに生きていた。べつに思想も信念もなかった。
たかはそこで十四郎を愛おしいと思い、直弼から心が離れてしまう…

という流れで、たかは直弼から離れていくんですが、この話、主膳ぜんぜん関係ないよね?
ここで完全に長野主膳は「運命の三人」からはじき飛ばされてしまいます。かわいそうな人だな…振られたとかそういうことじゃなく、あるべき設定から飛ばされてしまったのが可哀想なキャラです。

あとは、勝又十四郎が直弼に危機を知らせた手紙を後になって読んで慌てて桜田門外に駆けつけてみたり、直弼が斬りつけられ斃れる様を呆然とただ座り込んで眺めているだけだったり、なんていうか第三者?
これはこれで面白いからいいんだけどこの話の主膳はかわいそうな気がしました。

その他のみなさん…
水戸斉昭:よい政敵ぶりでした。時系列を忘れてたんだけど直弼より死んだのは後なのか。カンチガイしていて「あ、あれ、いつ死ぬの?」とかずっと思ってました。失礼な。
黒沢トキ子くん:(って言われてたからなんとなく君付け)この人は最後は水戸藩側に捕縛されたということでおっけー?たかがロクでもない真似をやらかすのでトキ子さんの方が可哀想じゃないですかと思わせておいて、トキ子さんはトキ子さんで恨みつらみでやりすぎモード、結局どっちもどっちであると思わせてくれました。
堀田正睦:京都まで行って条約締結の勅許を取ってこよう!という旅路、イヤに楽観的なのでだいじょうぶ?と思っていたらやっぱり駄目でした。でも、直弼に怒鳴られたのはかわいそうだ。直弼が怒る気持ちもよくわかるんですけど、その場に居合わせもしなかったのに怒られてもなあ。でも「一人でダイジョウブダイジョウブ!」だったのは堀田さまだったから、やっぱり直弼としては怒るのか。

ってどう見てもこの感想直弼に入れ込んでいませんね。うん。実際よくわからんのですよ。直弼という人は。立派そうで実行力があって…というのは分かるけど。ただ、この人、立派なんだけど、誠実なんだけど、なにに一番誠実って、自分の生き方そのものに対して誠実なんだと思うんですね。自分がこうと決めた生き方をいちばん愛しているような。だから時々、直弼ってすごいひとりよがりに見えてしまうんですよ。なんだけど主人公だからひとりよがりということになっていないように思えまして。
それよりも、直弼の周囲に登場する人間の弱さのほうを愛してしまうなあ。そんな話でした。

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