角田光代二冊、「八日目の蝉」と「三面記事小説」
ずいぶん前に読んで人にも貸してしまったんですが「八日目の蝉」の感想でも。
前半の希和子の逃亡については、よく感想で「捕まらないで欲しい」みたいなのを目にしまして、私は逆だったんですね。早く捕まった方がいい、とずっと思っていました(連載中)それは何故かというと、明らかに希和子さんがおかしくなっていると思ったから。この人、おかしいですよ。なんだか目的と手段がいつのまにか入れ替わってしまったような、精神の不均衡を読んでいて感じました。だから、早く捕まってもう楽になっちゃったほうがいいと思っていました。
だから希和子が捕まる段になった時も、ああ、この人はやっと解放されるじゃないかと思ったものですが、実はそうじゃなかったんですね。誘拐された恵理菜=薫や、彼女の家族にとって事件は恵理菜の解放と希和子の逮捕で終わらなかったように、ずっと事件は続いていたように、希和子にとっても「捕まって終わり」ということではないのですね。希和子は捕まって司直の手に渡されて裁かれたからと言って、薫への思念を捨て去れるわけではなかったんだなー、それって当たり前だよな、と。
あともう一冊、「三面記事小説」。これも角田光代。三面記事に出てるような事件の裏側に実はこんな物語が…?みたいな小説です。そういえば「八日目の蝉」も日野の事件がモデルですな。
「三面記事小説」でよかったのは「ゆうべの花火」と「赤い筆箱」。「ゆうべの花火」は、不倫相手の妻を殺してくれとインターネットで依頼する女の物語。不倫するヒロインがひっじょーにイタくていい。「八日目の蝉」の希和子さんも不倫時代はさりげなくイタい女だったよなーと苦笑したもので(2歳の子供がいる友達に不倫トークで長電話何度もかますというエピソード)、角田光代はこういうイタさを描くのが非常にうまい。いじわるですねえ(笑)
「赤い筆箱」は女の子が不審者に殺されて…という事件。登場する姉妹の葛藤が素晴らしい。しかしあんまり言ってしまうとネタバレになってしまう。しかし、これは面白いです。おすすめ。
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