久々に本の感想とか。1(黒衣の宰相)
大変お久しぶりになってしまいました…
ずるずる暮らしていたのですが、本の感想なんかをいろいろ書きたいと思ってはいたので、とりあえず。
黒衣の宰相という本を読んでみました。
家康のもとで働いた僧侶・金地院崇伝の小説です。墨染の僧衣を着ながら政治に参加してるから黒衣の宰相なわけですね。有名な方広寺の「国家安康 君臣豊楽」という例のアレにいちゃもんをつけた人、ということなのだそうですよ。
大河ドラマ「葵 徳川三代」に出てきたんですが、というわけでビジュアルイメージはそれで固定されてしまいました。っていうかそんな人にスポットが当たってる「葵」ってやっぱりマニアック大河ですな。
崇伝は若くして大出世を遂げた人なのですが、この小説で見るとキャラ的には「会社に入ったら希望はマーケティングか商品開発で!」みたいなところがありますね。板倉勝重さんというかたが家康配下にいるんですが、その方がとてもいい人で(この小説では)そういういい人が、「自分は困っているからこういう手伝いをしてくれないか」と言ってきてくださるんですよ。ありがたい話です。ふつうはそういうものを足がかりに人脈を作っていくものですね。
なんだけど彼は断る。板倉さんにお願いされたのが地味な仕事だから(笑)もっと派手なのがいい!オレは世間に出て権力をつかむのだ!ってー。しかし板倉さんの主人であるところの家康に「若い頃は地味な仕事をして苦労しなさい」とチクリと説教されてしまいます。
基本的に「エラくなってやるぜ!」というバイタリティで動いている人なんですが、途中から動機がくっつきます。戦乱の世を安定させるために汚れ仕事でもなんでもやる。自分は恨まれてもかまわない…と。でも、まさに途中からくっつくんですよね。本人の中で途中から固まったそうなのでしょうがないんですけど、どうも、くっついた感が否めない。
あと、男の世界に生きてるんだけど突然美女に惚れられたりとってつけたように濡れ場を投入するするあたりは高杉良的ですね!(会社から離れろ)
どうもとってつけた感が否めないのはコレが俺様カッコイイ小説だからだろうなあ。だって、詐欺まがいの方法で荒寺をみるみる栄えさせちゃったり、家康が三成配下の忍びに襲撃されてるところを偶然通りかかって助けちゃったりする。配下の忍びの女には愛を告白され、大阪城にいる小宰相の局はかつて愛し合った女。政治の世界に生きるために崇伝は彼女を捨てるも、彼女の面影を忘れたことは一度もない(なんて都合のいい)
生き別れの友達は大富豪になり自分を助けてくれる。しかし友はあろうことかキリシタンになってしまった!キリシタンは禁令になったのに!崇伝は涙を呑んで友を追放する。友達を追放しなければならない自分カッコイイ感がにじみ出るようなキャラです(※このあたり言いがかり)
つーかこの人、「あんなにがんばったのに家康が自分を信頼してくれない!」って嘆くんですが、人に与えないのに返して欲しいとはこれ如何に。なら最初に板倉さんをサポートして人徳をアピールしなさいよ。そんな地味な仕事じゃイヤだオレが世に出られないと人の手を振り払っておいて「信頼して欲しいなあ」という、なんて矛盾に満ちた態度。
というわけで主人公キャラとしてはとっても感情移入しづらいのですが、なんですかねこのドリームちっくな展開は。女キャラは本○ひろし的にご都合主義の固まり…なのは個性?いや本○ひろしはあれはひとつの世界を作ってるんですけど。
歴史的に地味な存在を女性によって華やかに彩ってるということなんですけど、その女と来たら「一度は捨てたのに、崇伝のハートの中にあるアツいものをただ一人理解してくれる」とか、「ずっと恋い慕っておりました」と唐突に告白するとか、いやあ、ロマンだなあ(棒読み)
おお、褒めていない。再開していきなりコレですか。
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