貴志祐介の「青い炎」
まりやさんとこで紹介されていた「青い炎」を読んでみました。思えば貴志祐介ビギナー。
主人公の秀一は完全犯罪に挑んだはずなのに、彼が思ってもみなかったところで計画に綻びが生じるさまが緻密で面白い。そして、主人公がやってしまったことについてあとになって次々と「こんなことしなきゃよかったのに」と思えるようなことが出てくるところは苦く切ないですな。
作中で秀一が引用するのが「山月記」と「こころ」であるあたり、高校生らしさを醸し出しているような気がします。この手のテーマでは「罪と罰」が来るかなと思って、そのとおり秀一も読んでるんだけど、実際に彼の心に響いてのしかかるのは教科書に載ってる「山月記」と「こころ」なんですな。(てゆーか「山月記」だ)こういう肉付けが、シンプルな犯罪モノというだけでない面白いところだと思います。てか「山月記」好きだったなー。当時、周りのみんなが主人公が虎になるという超絶展開に心を奪われていたのを思い出します。
細かいディテールと言えば秀一のお母さんの料理描写がなんとも。見た目完璧なのにまずいんです、って。「女たちのジハード」の紀子さんの料理描写で「何時間かかってるのか分からんがとりあえず謎の練り物と美しく花形に抜かれた野菜があり、完成した料理は一品もなく、そのわり断固として手伝わせてもらえない」とゆーのがあったんですが、それと同じくらいウケました。と、ヘンなところで感心してみる。
というわけで結構面白かったです。でもあの最後はちょとどうなのよと…(苦笑)最後までキミって人は。
「黒い家」も気になってるんでそのうち読んでみようかな。
「青い炎」は映画の予告だけ見たことがあり、映画もちょっと気になります。どんなふうになってるのでしょうか。
「読んだ本」カテゴリの記事
- オレたちバブル入行組(2010.06.14)
- 横山秀夫『臨場』を読む(2010.06.07)
- 黒川博行「螻蛄(けら)」を読む(2010.05.18)
- 「江戸の歴史は大正時代にねじ曲げられた」(2010.05.06)
- 「世界で一番おいしいコーヒー」(2010.04.11)
The comments to this entry are closed.
Comments
みなみさん!貴志祐介良いですよね!
「黒い家」もいいんですけど、ぜひぜひ「クリムゾンの迷宮」を読んでください。私の心のベストテン(トラウマ本部門)にいきなり食い込みました。
みなみさんならきっとハマるはずです。
Posted by: まりや | September 13, 2006 11:20 AM
まりやさんこんにちわっす。
貴志祐介いいですねー。今まで読んでいなかったのがもったいないっす。
「クリムゾンの迷宮」トラウマ部門ですか…な、なんか大丈夫かな。本を今ほぼ全部片づけてしまったので引っ越ししたらゲットしようと思います。
Posted by: みなみ | September 14, 2006 07:44 PM