映画の「タッチ」
そういえばサンデーの感想しか書いてません。おう。
…ちょっと違うことも書こう。
というわけで先日「タッチ」の映画を見てきました。きっとカッちゃんが死んでタッちゃんが野球を始めるところくらいまでであろう、と思っていたら、26巻ダイジェストでちょっとびっくり。
(ここから盛大にネタバレ)
とは言っても、26巻まるまるやるわけではありませんでした。タッちゃんは2年生で甲子園に行くし、柏葉監督も出てこないしね。南は新体操しませんし。
個人的にはなかなかよかったんじゃないかと思いました。勿論、「え?」と思ったところもあったりはするのですが…というのは、カッちゃんがちょっとかわいそうで。
「タッチ」って最初、和也と南がお似合いと思われていて、達也は引いちゃってるところがありますよね。だけど南は本当は達也が好きで…という部分で、どっちも優しい達也と和也は切ない、特に報われない和也がかわいそう、ではありませんか。映画だと時間の都合上、最初から南は達也が好きです。そして、和也と南の公認カップルぶりとかもないので、和也の立場がないってゆーか(苦笑)ちょっと和也が気の毒でした。だって最初からフラれてるんだもん。
和也の死については、かなりはっきり描写してありました。子供が飛び出して和也がそれを助けて、衝突音、救急車を呼んで…と。これ原作だと途中までわかんないじゃないですか。いや、むしろ初見で読むと、まさか死ぬとは思わないのではないかと。私は和也の交通事故を知っていてコミックスで後に読んだのですが、週刊で読んでたら結構な衝撃だったのでは?まさか殺すとは思わないじゃん!
映画は時間が短いので原作でやるようにはやらなかったのだと思いますが、和也の死の場面については映画を見て逆に「原作の演出スゲエ」と思ってしまいました。いや、映画だとですね、南ちゃん(長澤まさみ)の号泣場面で泣く声を消していないのですね。原作(とアニメもそうか)だと、南が和也の死で泣く場面、電車の音をかぶせて、敢えて南の泣き声を台詞つうかネームで描写しないではありませんか。
原作は同じように上に電車走ってますが、南の号泣の音は消していない。
ああ、タッチっていうのはこういう演出をして、こういうところで感動させる漫画だったんだなーと改めて思ってしまいました…あらためてあだち充スゲエ。漫画なんだから音は出ないのに、敢えて電車の音や聞いてる音楽のボリュームを上げて号泣描写を描く。
もっともこれは漫画ならではの描写とも思いますので、映画のアレもありなんだと思うんですが、個人的には号泣ってのは演技で「いかにも号泣してます!」ってやられると、なんか逆にわざとらしいような気がしまして、あれは原作のほうがスキでした。
しかし原作と違ってこれいいかも?と思ったのは、達也の母親が、達也が野球をやるのを反対する場面ですね。いや、和也の人生を背負うことはない、みたいに最初反対するんですよ。最後は当然、応援するわけですけども。そうだよな、そういうこともあるかもしんないよな、と納得してしまいました。
達也の母もそうですが、南にしても、和也が死んだから『めざせタッちゃん甲子園!』となるわけではない。むしろ2時間の映画でそれをやったら、南はトンでもなく悪い女であったと思います。
映画の南像は、原作とは違いました。
そもそも甲子園は「三人の夢」であり、南は女性であるが故に甲子園には行けない。だから和也(と達也)がその夢を担う。南は和也が死んで、達也が一度は野球部に入るけどやっぱりいろいろあって辞めてしまって、そうすると自分もつらくてマネージャーを降りる。達也は自分から野球部に戻り、「三人の夢」をつなげるため甲子園をめざし、南に「オレが甲子園に連れて行ってやる」と手紙でメッセージを伝える。
原作の南ちゃんは「甲子園はカッコよかったなあ」で、「カッちゃん甲子園つれてって!」で(甲子園は南と和也の夢だよね)、和也の死後は、なにげなく、本当に自然にその役割が達也にバトンタッチされる。26巻かけた漫画ではそれはとても自然に描写されているけど、こんな長い話を2時間の映画にまとめた上に、和也が死んだ次の場面で達也が南のために甲子園をめざし、南は新しく達也のために「めざせタッちゃん甲子園!」とか書いていたら、…どうでしょう。なんだこの女は、だったんじゃないかな。軽すぎるじゃん。勝手だし。そもそも原作の南も本質的には自分が出来ない夢を惚れてもいない和也に託すんじゃないよと言えなくもないわけで(それは結果論であり、和也の性格もあるので南のせいではなんだけどさ)
でも南はあだち漫画特有のマドンナであり唯一絶対無二のアイドルヒロインであるからこそ、彼女のために和也や達也が甲子園を目指すとゆー図式は成り立つんだよね。実写ではこれは無理です。無理だから方向性を変えた。これはとても有効であったと思います。
根本的にはカッちゃんを前半でもうちょっとプッシュして…というのがあると、和也の死後も非常に重みが伝わってよかったんじゃないかなーと思うので、本当なら前後編の映画で見たかったなあ、これ。
そうは言いつつ結構面白かったです。原田君の棒読みはどうなのよとは思いましたが。
しかしこれホントに長澤まさみ映画だなあ。とてもそう思う。でも長澤まさみの南は可愛かったと思います。おお、この子のためであればがんばるであろう、みたいな。
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