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金子達仁「いつかどこかで。」

金子達仁「いつかどこかで。」(文春文庫)読了。
ナンバーに載ってる連載エッセイですね。ナンバーで楽しく読んでいるので、文庫を本屋さんでふいっと見かけて買ってきました。

エッセイ集だから何気なしに軽く読めていいかな、と思ったのですが、のっけから濃い。というか初期のエッセイは、エッセイと言うより自己紹介気味。「金子達仁っていうのは、こういう人間で、こういう人間がこのエッセイを書いてます!」という印象を受けてしまった次第です。というわけで濃い。思い切りベタな言い方をすると、金子節全開みたいな。でも読んでるうちにすぐ慣れました。そうなると勢いで読んでしまうもので、さくさく読み進み読了。

ところでナンバー、毎回買ってるわけでもないので毎回このエッセイを読んでるわけでもないのですが、その中で持った金子達仁の印象ってのは以下の二点です。

1.熱烈な阪神ファンである。
2.熱烈なサッカーファンである。

…印象としては間違っていなかった模様(笑)つーか、まんまですがな。

さて、この本1冊のなかで一番印象に残ったパラグラフがありましたので、載せてしまいます。

 やっぱりノストラダムスの予言は実現しないのかもしれないな――遠くの方から聞こえてくるような声を聞きながら、私はそんなことを思っていた。
 早朝の二子山部屋で私が見たのは、因果応報を信じ、つまり自分の流す涙と汗は必ず何かを生んでくれると信じて稽古に励む男たちの姿だった。そう信じていなければとてもこなせないぐらい、彼らの稽古は過酷だった。あの姿を見てしまうと、因果の委細に関係なく、ただ天から恐怖の大王が降ってくるという件の予言が、何ともバカらしいものに思えてきてしまったのだ。

(「いつかどこかで。」文春文庫120ページより)

ああ、いい言葉でいい文章だなあ、と思ったところです。
ときにこの本は2000年に単行本を刊行、2002年に文庫化。
最後に収録されたエッセイ「阪神との巡り会い」はこんな言葉で結ばれています。

阪神タイガース? その話をするのは来年にしましょう。
(同文庫330ページ)

阪神タイガースのセ・リーグ優勝は03年ではありませんか。そして03年、金子達仁という人は、「いつかどこかで。」の中で、「阪神優勝するの?ほんと?」とばかりに、どきどきわくわくしながらエッセイを書いていたのだなあと思い出します。そんなことを考えながら、04年の終わりという時期にこの文庫を読んで、大袈裟に言うと未来を先取りしてしまったようなそんな気がしたのでした(笑)いや、そんな言い方はとてつもなく大袈裟で、実際には「自分は先に読んじゃってオチを知っている小説をいま誰かが読み始めようとしている」みたいな話なんですけど。

好きなものについて一生懸命語っている人はいいなあ。
そんな風に思った1冊です。

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