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「天璋院篤姫」宮尾登美子


天璋院篤姫(宮尾登美子・講談社文庫上下巻)ようやく読了。
途中、電車に乗っている間ひたすら寝ている期間とかあり買ってから間が空いてしまいました。13代将軍の御台所、篤姫が主人公の小説です。前のドラマの『大奥』の主人公にもなった方ですね。
ほんとは宝塚で上演された『花供養』(これは後水尾天皇の話。秀忠の娘和子が嫁いだ天皇)つながりでそのへんの話を探していたんですが、なんとなくこっちを見つけて、買ってきました。

歴史小説の面白いところは、主人公が立っている立場によって、物の見方が全然変わるところだと思っています。こいつなんてヒドいヤツなんだ!と思われた人物が、別の立場に立ってみればすっごくよい人だったり、だってしょうがないじゃんというどうしようもない事情があったり、書く人の視点によって同じ人物の解釈が変わってくるし、ある時は好意的に描かれた人が、ある時はそうでもない。そういうところが非常に面白いと思っております。
この話では十五代将軍慶喜が主人公の篤姫にめっちゃ嫌われておりまして、その理由というのも結局のところ、会ってみたら人物として気に入らなかった、という感性に寄ってたつところが大きいんですね。
ほんとは篤姫は薩摩から来て、薩摩では「十四代将軍は紀州家じゃなくて一橋慶喜を!」と言われ続けてきたのに、本人に会ってみたら、なんだやる気なさそうだし軽そうだ、というふうにいい印象を持たない。この違和感をずーっと引きずった…という流れなわけです。これは宮尾登美子が、篤姫は「徳川家では慶喜の一族との結婚はなるべく避けるように」と言い置いていた、という話を直接関係者の方から聞いて、そこまで言うからには最初から嫌いだったのでは?という仮説を立てて作った筋立てだそうです。

あともう一点、この時期十四代将軍家茂に嫁いだ皇女和宮。
嫌々江戸にやってきた和宮と、彼女を嫁として迎える立場の篤姫サイドは何度も何度も対立し、諍いを起こし、うまくいきません。篤姫サイドから和宮サイドを見ると、うっわーなんだよこっちが迎えてやってるのにその態度は!と読んでてうっかり思っちゃうんですけど(苦笑)でも考えてみれば、嫌々江戸に来てみた方からしてみたら、言いたいことだってあるよなあ、と逆の立場から考えたり、そういう意味で面白かったです。

でも十三代将軍はドラマの『大奥』に出てたあんなんだったらいいよなあ(笑)とも思いました。
この小説の篤姫は結構信念を持った人で、一種、思い込んだら~なところがあります。慶喜が家茂を毒殺した(陰謀に加担している)ってずーっと思ってそうなんですが、実はそれは特に根拠はないんですね。でもこの小説は慶喜視点で語られることがないので、それは本当なのかどうか判らない。でも篤姫は「そうに違いない!」という思いを抱いているわけです。そのようにずっと嫌っているわけです。

あくまで篤姫の側からのみ語られる話では、読者は神の視点でもってそれが本当かどうか知るよしがないわけです。でも、この小説はこういう「あくまで篤姫の見た話」というところがいいところだと思いますので、慶喜がホントにやったかとどうかはあまり関係ないんですね。
大事なところは、「(ホントかどうかはともかく)慶喜が家茂を殺したと篤姫は思っていた、それくらい慶喜をずーっと嫌いぬいていた」篤姫の姿であり、その気持ちというか意志というか、ものすごく強い物を抱き続けた、そんなにも意志の強い女性がここにいた、というお話なのだと思いました。

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